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What you see is what you are...by まろたけ個人的粒焼(フォーム)
来たよ、モルディブ
1999/07/14(水)

水上コテージ
あの丸いのはなんやったんやろ?(水上コテージにて)

 また雨かぁ、と思いつつ、外を見ていたら、モルディブに着く頃にはすっかり晴れてしまった。さすがに雨の神様も気の毒に思ったに違いあるまい。あるいは、雨男はエリア的に境目があるのかもしれない。タイでは曇り男で、バングラデシュ辺りで晴れ男になるとか。

 ま、それはともかく、すごい湿気と温度の中、モルディブの首都マーレに降り立ったのだった。表に出たら早速宿の勧誘。すまん、もう取ってあるンや。謝りつつ、土産もん屋のおっちゃんらしい人に、モルディブフィッシュを土産にしたいンやけど、可能か? と尋ねる。持って帰れるで、とおっちゃんは言うてた。

 モルディブフィッシュってなんやねん。一言で言えばカツオであり、いわゆるかつお節になったのもモルディブフィッシュというらしい。よく知らんけど。詳しくは「美味しんぼ」第24巻、「カレー勝負」を参照されたし。ま、詳しくは土産物屋での顛末と一緒に後ほど。

 港に出ると、そらまぁ、なんとも言えん、きれいな海。しばらく見とれておりました。こないだの「到着、到着」の写真ですわ。そこからドーニというディーゼルの音けたたましい船に乗り、40分。エンブドゥフィノル島に到着したのでした。こざっぱりしてて、ええかんじのとこでしたね。

 フロントから各部屋まではうっそうとした怪しい径を抜けていきます。当たった部屋は水上コテージの一番左端。一人やのに、ダブルとセミダブルのベッドがあって、おぉ、快適ぃ〜、と御満悦でした。隣も見えへんようについたてしてあるし。でも、海に出たらそんなものは何の役にも立たないのだった。

 モルディブの島の周りはサンゴで出来てて、かなり遠くまで歩いていけます。歩いていけるならば、歩いていこうやないか、ほととぎす。裸足でドボンとコテージのベランダから飛び降り、浅かったのでズシッと来たよ。で、てくてく歩いていったのだった。

 が、行けども行けども、深くなってるらしい青い部分に到着しない。結構遠いなぁ、と思っていたら、砂地が段々サンゴの死骸だらけになってきた。これがまた素足にはきつくて、痛いのである。むやみやたらと歩いたのでは足がすり下ろしリンゴになってしまう。やむなくそろりそろりと歩いていたけれど、やっぱり着かない。まさか海が逃げてるのではあるまいなぁ、お月さまもついてくることだし、などと訳の分からないことを考えながら(すいません、今考えました)歩き続けたのでした。

 小一時間ほど歩いただろうか。ふと気がついた。深くなってるわけではないのに、水が増えてないか? あ。うっかりしていた、潮は満ちるのである。膝くらいまでやったのが腿のあたりに来ている。急に不安になりました。いや、水上コテージの高さからしたら、首辺りまでで足がつくくらいやろし、まぁ、溺れることはあるまい。しかし、深くなると普段は入ってこれない魚とかがやってくる恐れがある。大体、愛想のない和歌山は白浜のボラの大群が脇をすり抜けるだけで大概恐ろしいのに、このような異国の海ではどんな魚が出るやも知れない。近くの海ではマンタもいるらしい。浅瀬とはいえ、間違ってやって来るかも知れん。なんせあれは薄べったいから。サメなんか来た日にゃア、もう。木曜スペシャルだか、金曜スペシャルだかのドキュメンタリーが頭をよぎる。足がぁ、足がぁ。いや、そうなったら足だけでは済まないやろけど。

 とにかく急いで戻ることにしました。しかし、振り返ってみてしみじみ思いましたね。結構歩いてきたんやなぁ、と。水上コテージがはるかかなた。写真撮っとけばよかった。水中カメラ、やっぱり要るな。泳ぐには中途半端である。腹がサンゴに擦ってそっちの方が痛いに決まっている。やむなく歩いて帰ることにした。しかし、誰か見ていたら、アホやなぁ、と思ったに違いない。自分でも思ったくらいやから。行ったところで何があるわけでもないのに。しばらくして、雨がザーッと降りだした。もう最悪。

 ようやく辿り着いたころには胸の辺りまで来ていた。間一髪セーフである。見るとやっぱりさっきまでいなかった変な魚が泳いでいる。早く気がついてよかった。ま、でも、性懲りもなくビーチサンダルを履いて再チャレンジしたのは言うまでもない。でも、やっぱり無理でした。果てというだけあって、はてしない。そのまんま。

 で、上がって周りをうかがうと、妙にひっそりしている。おかしい。誰もいない。不安の上塗り。慌ててフロントの方に行ったら、みなさん、お昼を取ってはりました。そうか、昼やった。忘れてた。ギリギリセーフで昼にありついたのだった。お前は一体どこをほっつき歩いてたんや、この狭い島を、って顔をされたなぁ。飯はうまかったですよ。洋食ですねぇ。ドイツ人とか主に欧州の人が多かったみたいやし。魚のフライみたいなの。あ、晩飯やったかな。忘れた。あっさりしてて、関西人にはいいかも。Sさんは醤油持ってきてはったけど。竹内君、要る? と親切に言うてくれはりました。さすが関東の人。

 昼からは何したっけかなぁ。雨降ってたもんなぁ。ま、先は長いといきなり友達に絵はがき送ってたと思う。それからバーで飲んでたはず。毎日飲んでた。でもなぁ、結構高いンや、相場が。日本で飲んでるのと変わらんやんけぇ、なんて思ったな。でも、飲んでた。Sさんはすごかった。日本酒の一升瓶持ち込んでたもん。回教国やから税関で巻き上げられるって書いてあったのになぁ。後でお相伴に与ったけど。しかし、その日本酒がどうやらその後の運命を分かつ決め手になったのだった。それはまた後で。

 その後は昼寝してたらしい。メモに書いてある。ラジオもテレビもないし、島も15分か20分もあれば回れるような小さい島やし、することがない。よく寝たはず。その晩はなかなか寝つけなかったから。メモによると、ゼミのネタを考えた、と書いてある。ほんまか。信じられん。でも、したんかなぁ。帰国してすぐやったはず、発表が。相棒(後に本当に相方になってしまった)はも一つやる気なかったし。いや、打ちあわせめんどくさいって一人でやってた気がする。昔から変わらんなぁ、人によう任せんの。

 晩飯の後、ひとしきり飲んで、御機嫌で部屋に。部屋の明かりに引きつけられて、何やら怪しい、チョウチョウウオの親玉みたいなのがゆらりゆらりと泳いでいる。釣ってみたかったけど、針と糸がない。餌、そうや、カロリーメイトを持ってきてたなぁ。それを崩してやってみると、食うてるやないか。うまい、うまいッスよ、だんな。そう言うたかは知らぬ。おまゑ達はをそらく世界でもつとも健康的な魚だらうよ、と昔の小説家のような口調で語りかけていたのだった。贅沢ものめ。結局カロリーメイトは二日目には全部すっかり魚の胃袋に収まってしまったのだった。まだ生きてるかな?

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